第177回
昭和27年(1952年)に公布された真珠養殖事業法(脚注1)に則って真珠検査制度が始まりました。海外へ真珠を輸出する際、国の検査所で品質鑑定を受け、合格品のみが適合されるという制度です。薄まきや加工キズ等の欠陥品の流通を防ぐのが目的です。
その制度関連の文書(脚注2)を見ていて驚くべきことが記載されていました。「光沢、俗に艶は照りとも、輝きとも言われる。艶はまた真珠の巻きの厚さを表現しているので、巻きの判定の材料ともなっている」
巻きは真珠層の量のことを言い、テリは真珠層の質のことを言うのですと私が自説を述べますと、真珠業界のベテランの方々は「否、巻きとテリは関係がある」と主張します。この主張のルーツはこの文書だったのです。この記事の最後に「今後の科学的研究が期待される」と結んでいますが、私も自説の背景について科学的研究を展開する決意です。
脚注1:この法律は平成10年(1998年)廃案になりました。
脚注2:松井佳一『真珠の事典』Ⅴ、真珠養殖の行政制度より。