真珠作りの主役の交代劇

第175回

真珠養殖法の発明者は誰か? 未だに続いている熱き論議です。本稿では論点を少し変えて、細胞レベルの話からこの問題に迫ってみたいと思います。16世紀中頃の顕微鏡の発明以来200年間、世界中の学者たちの養殖真珠作りへの切り口は「何を核にすると真珠ができるのか」でした。これは全く間違ったアプローチです。

19世紀中頃ドイツのヘスリング氏等が真珠は薄い膜に包まれて貝体内に存在していることを発見しました。ここから切り口が外套膜という貝固有の貝殻作製臓器に向かいます。

現代の切り口は更に一歩進めて、外套膜の一組織である外面上皮細胞が主役であるとしています。この細胞のみが、移植後も貝に助けられて増殖し、薄い膜即ち真珠袋になります。そして袋の中に粘液を分泌します。この粘液こそ真の主役です。何故なら、この液の中でカルシウムが結晶化し、核の周りに集合し、真珠層を形成するからです。