青空とオーロラの饗宴

第173回

「ナチュラルブルー」と呼ばれている一群のアコヤ真珠があります。真珠内部の、核と真珠層の境目に有機物など黒褐色の“異物”が存在し、真珠全体を黒っぽくしているのです。“異物”ができる理由は解明しきれていません。従ってこの真珠は意図的に作ったものでなく、結果的に出来てしまった真珠です。テリが強く、ラウンド形で無キズといった高級品となると極めて希少である理由のひとつです。

おもしろいことに、この真珠には3種類の光が作る色彩が現れているのです。ひとつはブルーです。“異物”は関与していますが、なぜそれがブルーになるかについては、光のレイリー散乱説を唱えている研究論文があります(注1)。青空と同じ現象ということです。あとの2つは、光の透過による干渉、反射による干渉です(注2)。

ブルー系の球体の中で、青空と2つのオーロラが毎日饗宴を繰り広げているのです。

                 注1:金井昌邦「真珠の色に就いて」応用物理26、27(1957、1958)

                 注2:蛍光灯などに真珠を接触させますと、上下半球に2つの干渉色が現れる現象を指します。