ただ物理的、光学的に解明

第170回

「真珠の層状構造とiridescence(※)に就いて」なる論文があります。京都帝国大學の内田洋一、上田正康両先生が執筆され、昭和22年に発表されました。真珠の研究者達にとっては現在でも必読文献です。最近になって私はこの文献の真の重要性に初めて気が付きました。

それはこの論文が真珠で起きる「テリ」なる現象に、物理学に徹して取り組んでいるということです。表面から数えてどの辺の結晶層がこの現象に関与しているかを、分光器を使って計測しているのです。ずばり70ミクロンです。それより浅い層も深い層もiridescenceには大きな影響は与えないというのです。その付近を構成する結晶層の厚さと整然とした配列がテリを決める(iridescenceを放つ)ことを割り出したのです。

貝の生理、真珠袋の挙動あるいは水温変化や餌料環境などに一切触れることなく、結晶層の球状の集合体である真珠で起きる現象を、物理的に光学的に解明しているのです。

※虹色、光彩、干渉色のこと