品質というあいまいな言葉

第168回

「高品質真珠の生産を目指す」「この真珠は品質が良いものです」等々品質の良さを強調する言葉が日常的に使われています。しかし真珠の場合、品質という言葉は非常にあいまいな言葉です。何故なら品質は幾つかの品質要素から成る総称だからです。品質要素とは「テリ」「実体色」「まき」「かたち」「キズ」「面」等のことです。単に「品質が良い」では、テリが良いのか、キズが少ないのか、かたちが歪んでいないのか、あるいは品質要素のすべてが上位にあるのか、最も肝心な品質の内容が全く分からないからです。

さらに「品質要素のすべてが上位にある」ことを指すのだと仮定しても、大きな問題が残ります。それは品質要素間の順位付けが不明だからです。換言すれば、宝石としての真珠の本質、真珠にとって最も重要な品質要素は何かが不明のままであるからです。太古の人間が真珠を崇めたのは、その輝きであり、現代流で言えば、光が作る数々の色彩なのです。