美の奥深さと人間の目の鋭さ

第165回

テリの測定について研究し始めて20年以上が経ちました。ひとつの転機になったのが、10年前から取り組んだテリのメカニズムの解明です。既存のメカニズム論の欠陥を是正し、現象と理論が完全に合致するところまで漕ぎつけました。その延長線上に測定問題が浮上してきたのです。

真珠の表面に現われる光の干渉色、それを光の反射と透過に分け、球体の上・下半球に、全入射角毎の同心円上の色模様として現わすことに成功しました。テリが良い程、色模様はより多色であり、より鮮やかであり、より明るいのです。この色相、彩度、明度の3次元図を描きだし、それぞれを計数化すれば、テリの良さはひとつの測定値として現わされるのです。習熟者の“目”による評価と測定値は合致しました。振り返って思うことは、真珠というこの宝飾品の、美の奥深さと、それを上回る人間の“目”の鋭さです。