単位とは理解と想像の世界

第163回

世界で初めて養殖真珠を生み出した日本では、その宿命とも呼ぶべき奇妙な伝統が、この業界には多々あります。そのひとつに単位の「乱れ」があります。真珠の直径は「ミリ」で取引されるが、売買は「もんめ」です。大事な原料である核の直径は「分・厘」で、貝の大きさは「もんめ」、ネックレスに至っては「インチ」といった具合です。

同じ単位でも、真珠の美しさに関係する分野では「乱れ」ではなく、「理解不能」といった世界に遭遇します。核の周りの真珠層がテリという光の干渉現象を生み出しているのですが、厳密に言うと真珠層を構成している結晶層がこの虹のような現象を生み出しているのです。問題はこの結晶層の大きさです。縦・横1~2ミクロン、厚さ0.3~0.5ミクロンです。ミクロンとは千分の1ミリの世界です。虹の七色の赤は700、青は400ナノメータ、因みにナノメータは千分の1ミクロンの単位です。「理解」ではなく「想像」が必要なのです。