北窓光線

第162回

この業界での永遠とも言うべき課題は、「どういう光線状態が真珠の品質評価に適しているか」です。専門家たちの解答は「北窓光線下で評価する」の筈です。北窓からは終日太陽は見えません。即ち天空光(青空の光)です。真珠ばかりでなく、微妙な色調の違いを査定するのは「北窓後」、これは昔からの常識になっています。しかし「北窓後」でも朝は青色、日中は黄色、夕方は橙色を帯びます。勿論夜や暗い日は使用不可です。

人工光線で「北窓光」を作れないかは、業界挙げての課題です。国立真珠検査所があった時代、この問題に対処すべく共同研究をしたことがあります。光源の色温度、照度、光の指向性、拡散度等々照明の適用条件を設定し、多くの実験を試みました。が、「北窓光」にはどうしても近づけないのです。研究中断後、問題は、照明の適用条件だけにあるのではなく、球体という形、表面拡大と内面透視、光の干渉など多角的視点であることが分かりました。