画竜点睛

第161回

画竜点睛(がりょうてんせい)、有名な諺です。竜を描いて最後にひとみを書き加えたら、天にのぼったという故事に基づいています。

真珠養殖での画竜点睛は何かを考えてみます。古くは養殖晩期に「化粧まき漁場」に移動し、そこで赤みを出させる、これは一種の画竜点睛であり、今流に言えば、テリ出し作業です。テリが出ることにより、真珠は「天にのぼる」すなわち宝飾品になるのです。「テリ」とは真珠に、輝きを伴った色彩、あるいは色彩を伴った輝きを付けることです。養殖の最終場面で実施する、一番大切な作業です。サイズのアップは勿論、無キズ、ラウンド、まき、面も大切です。しかし「真珠を天にのぼらせる」のはテリしかないのです。テリは結晶層の厚さではなく、何の歪みもない、整然とした積み重なりで決まるのです。それは真珠袋を構成する二千万個の上皮細胞の健康な分泌作業が鍵を握っているのです。