3つの誤謬

第126回

「人為的に核を入れてできるのが養殖真珠である」「光沢のことを真珠の世界ではテリと呼んでいる」「真珠のクリーニングとは、ネックレスの糸換えのことである」、以上の3つが人々の間に広く定着している。しかも真珠の本質問題にかかわる「3つの誤謬(ごびゅう)」です。 なぜ本質問題であるのかと言いますと、真珠層そのものへの無理解が、この誤謬の根底にあるからです。一層の厚さが200~500nm(ナノメータ、1mの10億分の1の単位)位の、カルシウムとたんぱく質から成る層が、同心円状に何千層と集まって真珠層を構成していることへの無理解です。 真珠層のこの構造は、貝の体の中で栄養分を供与されながら、真珠袋上皮細胞という特殊な細胞により作り出されるのです。汗で表面が汚れた場合、一層を剥いて新しい層を出してあげればテリは回復するのです。このnmレベルの層の積み重なりが、光の干渉という現象を起こさせ、テリが生まれるのです。3つの誤謬の克服こそ真珠復権の鍵なのです。