100回記念③、秩序・収拾への「分極化」

第100回

――真珠業界の現況と課題をどう捉えていますか。 この10年余業界を覆っている無秩序・混乱を注意深く見ていると、今日に至り、秩序・収拾に向けての変化の兆候が嗅ぎ取れます。それは一言で言えば「分極化」ということです。高価格帯の商品と低価格帯の商品しか売れない、あるいは中級の品質のものを売るのに苦労するといった現象です。この背景を以下のように考えています。 養殖法発明以前は世界には天然真珠しかありませんでした。それは稀少な存在であるだけに一部の富裕層だけの独占物でした。人々の真珠への憧れは数々の神話や寓話として語り継がれてきました。当時の状況を図式化しますと、 「真珠(天然真珠)=宝石」です。養殖真珠は当初より、この人々の憧れと図式をそのまま継承しました。そして今日の大量生産の時代を迎えます。当然ながら、 「真珠(養殖真珠)≠宝石」であり、「美しい真珠(養殖真珠)=宝石」の図式化の時代が始まったのです。