非線形科学

第87回

数年前、私たちは真珠の「テリ」とそれを作るアコヤ貝の生理との関係を明らかにするための実験を行いました。結果はすべて「~と~は一定の相関を有す」ということになりました。例えば貝柱の重さと「テリ」の強さには一定の相関性が見られるという具合です。問題はこの「一定の」にあります。何百という貝の貝柱の重さを量ると、その平均値は「テリ」の強弱とほぼ一致するのです。 ところが個々の貝に着目すると、やせ衰えた、貝柱も貧弱な貝の中から、見事な「テリ」を持つ真珠が出てくる場合があるのです。平均値では「相関」があるが、個体観察では「例外」があるという意味で「一定の」としたのです。 この生物現象特有の「相関」と「例外」の矛盾をどう解決したらよいのか、私たちのこの悩みに対して、非線形科学という全く新しい切り口があり、今世紀には大きな進展があるということを最近ある本で教えられました。