薄まきとテリ

第111回

薄まきの功罪について考えてみました。「薄まきは耐久性がない」というのが広く言われているいわば定説です。しかしこの定説は必ずしも具体的根拠に裏打ちされていません。“極薄(ごくうす)”は別にして、従来からアコヤ業界で言われている「官製はがき」の厚さ(0.25ミリ)以下でどのような劣化現象が起こるのかはあいまいなのです。 具体的根拠に基づいているという点から言いますと、テリが最も薄まきの悪影響を受けるのではないかと思っています。テリは真珠層の表層で起きる光の干渉現象です。輝きと光彩を伴って現れる真珠の命ともいうべき重要な現象です。ところが一方で養殖真珠の場合、核からの反射光という存在があります。これが多いと光彩などはその影響を受けて肝心な色が薄くなってしまうのです。真珠層は0.3ミリ以下になるとこの反射光が急激に大きくなるという実験データがあるのです。この点で“官製はがき”は正しいのです。