色線(しきせん)

第121回

貝の体の中で生まれる真珠は、その生成メカニズムという観点に立つと、不思議、未解明の分野が未だに山積しています。それらの“山”のひとつに「色線」(しきせん)があります。外套膜先端部付近に見られる淡い黄緑色の条線です。解剖学的にも生理機能的にも未解明の一本の線ですが、実践的には重要な意味を持っています。色線の名前の通り。線を境に真珠の色の濃淡が分かれるからです。黒蝶貝では、線の外側(外際 がいさい)を使えばより黒い珠が、内側(内際 さいさい)ならより白色系の珠ができるのです。両サイドを構成している細胞の色素分泌能力の違いが移植後も維持され、真珠の色に反映すると考えられています。 最近の研究でさらに興味ある現象が見出されました。外際部を子細に観察しますと、そこは七色の光の帯から構成されているのです。何とテリにも外際部はかかわっているのです。色線が持つテリへの影響力、この活用に養殖の未来がかかっているかもしれません。