羽衣真珠

第115回

先日IJT2010(国際宝飾展)で、まさに「魂を揺さぶられるような」真珠を拝見しました。大粒の淡水真珠です。右上方から左下方に向けて、赤から緑の干渉色がほのかに滲み出ているのです。瞬時に「羽衣」を連想しました。天空を舞う天女がなびかせるあの羽衣です。パステルカラーのように薄いのですが、真珠層表層から生まれる光の色だけに存在感があり、見る人の心に染み込んでくるのです。 いかなる真珠も体の奥深くにある真珠袋の中で生成されます。生きている真珠袋は、貝の生理変化に沿って微妙な分泌変化を繰り広げます。この変化の妙の頂点にこのような真珠があるのだと思います。アコヤの世界で“片まき”と呼ばれる真珠もこの変化の妙で作られます。片側がそれぞれピンク、グリーンの光の色を放つのです。しかし“連相”が合わないために嫌われる存在です。羽衣と嫌われもの、この溝をどう埋めるか、が課題です。