百年の確執

第120回

先日、ある種の“縁”で「エンドスコープ」を入手しました。1920年代にパリで製作されたものです。当時、日本産養殖真珠の登場に驚愕した欧米の宝石商達は、この時代の先端科学技術を総動員して天然・養殖の鑑別法を模索しました。「ルシドスコープ」「パール・コンパス」「ラウエ写真」等々の機器が考案されました。それらの中でこの機器は最も精度が高いと言われたものです。原理は、天然は層が中心から同心円状に形成されているのに対し、養殖は中心に核が入っているという構造上の違いに着目して、孔の中に光を入れてその光束の動きの微妙な違いで判定するという方法です。 現在私たちは知的好奇心から、この原理を復元したいと考え機器の修理修復に取り組んでいます。痛感することは、「養殖・天然の違いは核の有無にあり」という考えが根強く残っていることです。流通を席巻している淡水真珠はすべて無核である現代においても。