白い布と黒い布

第118回

真珠の品質は、一般的に熟練者による目視評価で行われています。この場合、北窓光線下、白いクロスあるいは黒いクロスの上に真珠を置いて評価するのが業界の常識です。さてこの2種のクロスですが、真珠の特性に根拠を置く、実に考え抜かれた使われ方がされています。ラウンドかセミラウンドかといった形の微妙な違いは黒バックです。珠の周縁部に現れる僅かな黄色みの有無については白バックが最適です。 光の干渉現象であるテリ、その干渉色を見るのは2つが使われます。ホワイト系アコヤ真珠は黒バックの下で、中心の青緑と周縁の赤紫が鮮明に現れます。クロチョウ真珠は白バックを背景にした時、周縁部に緑と赤のピーコックカラーが現れるのです。これらは球体である真珠の上半球に透過の干渉色、下半球に反射の干渉色という一種の“2色性”を、クロスという簡単な道具で見抜く、経験則が裏打ちされているのです。