疑似真珠

第95回

「…マイナスイオンやクラスター水など、効果が証明されていないにもかかわらず持て囃される商品、ダイエットや健康に良いという謳い文句だが使い方によっては逆に病気を引き起こしかねない健康食品…。 現代は科学の時代である。少しでも科学の味付けをして、いかにも本物の科学らしく見せかけねば信用を勝ち取ることが難しいのだ」 最近読んだ疑似科学に関する本(池内了「疑似科学入門」岩波新書2008年4月刊)の一節です。 読んでいるうちに科学を真珠に置き換えた「疑似真珠」がいかに多く市場にあふれているかに思い至りました。「オセアニアパール」なる貝殻製品。「貝パール」や「マジョリカパール」等々の模造真珠。伊勢志摩フェアで売られる黒蝶真珠や南洋真珠。基準・根拠は一切無しで乱発される“花珠鑑別書”。紙面をにぎわすサイズのみが強調された超薄まきのネックレス…。 これらの背景にあるのは、イメージ先行のみを放任し、厳正な品質基準や検査を怠った業界の体質ではないでしょうか。