擬人化

第107回

アコヤ真珠業界は、発明後100年も続いている産業ですから独特の言葉が沢山あります。端(はな)珠、胴(どう)球、裾(すそ)珠、シラ・ドクズなどもその一例です。浜揚げ珠のランク付けの言葉です。擬人化された言葉も目立ちます。「肌荒れ」「化粧巻き」「えくぼ」等々です。 白い布の上をピンセットで転がしながら、瞬時にしてその珠の特徴を捉え選別していく作業などは、習熟者(プロ)ともなると1時間に1万個の珠を選り分けると言いますから、1日に5~6万個、月に100万個以上の珠を見ることになります。こういうレベルでは自分と真珠が一体化しているような気持になるでしょう。これが擬人化の背景にあると思います。 いまひとつ、真珠層の構成成分としてタンパク質があります。そのDNAには、軟体動物発生の5億年前のカンブリア紀の遺伝情報が詰まっていることになります。私たち人間のDNAにも進化の原点に同じものが配列されているはずです。擬人化の起源です。