彩雲(さいうん)

第110回

「わたつみの豊旗雲に入日さし今夜の月夜さやけかりこそ」(万葉集巻一・15)ここでの旗雲(はたぐも)は彩雲を指します。高層にある巻雲や巻積雲に赤や青、あるいは緑などの七色が縁取って現れる非常に珍しい現象が彩雲です、先日沖縄の石垣島にクロチョウ真珠の研究業務で訪れた時、何気なく空を見上げていたら彩雲が出ていたのです。驚きと同時にその美しさに感動しました。古来から人びとが紫雲(しうん)とか瑞雲(ずいうん)と呼んで賛嘆したのももっともです。 「…雲が消えかかる時、その水滴の直径の大きさの違いに応じて光の回折現象で七色が現れる…」(『空の色と光の図鑑』草思社刊より引用)のが彩雲のメカニズムです。真珠の結晶層の微妙な厚さの違いに応じて光の干渉現象により七色が現れるのがテリのメカニズムです。 考えてみれば、光が演出する七色の世界は天空では、虹や彩雲あるいはオーロラなどとなって稀に現われますが、地上ではテリのすばらしい真珠には恒常的に現れているのです。