先天的か後天的か

第116回

真珠養殖技術というのは、見方を変えれば細胞レベルの技術であり、さらにその奥のDNAレベルの技術なのです。最近そのことを痛感しました。 アコヤ真珠の場合1960年代に、貝殻真珠層が黄色の貝から採ったピース(外套膜切片)を移植すると黄色い真珠が出来ることが国立真珠研究所から発表されました。色素を分泌する細胞は、移植した後、真珠袋になっても色素を分泌し続けるのです。 テリも遺伝するのではないかという幾つかの諸現象が最近になって言われるようになりました。テリを生み出す結晶層の厚さは遺伝する、即ちテリの良い貝殻真珠層を持つ貝のピースを移植するとテリの良い真珠が出来るというのです。 この重要な発見を目前にして、決して一面的に陥ってはいけないことを自戒しています。何故なら自然は常に、先天性と後天性の相互融和の中で発展していくからです。