ストレス

第71回

真珠養殖の仕事は、海と貝という生き物を相手の仕事です。水温の変化や潮の流れ、あるいは台風の進路など1年を通し海の表情には片時も目を離すわけにはいきません。 しかしそれ以上に目を離せないのが貝の表情です。真珠養殖に使う貝、例えばアコヤ貝はもともと深い海の底の岩などに付着して生活している動物です。海の底は潮の流れもほとんどありませんし、水温も大きく変化することがありません。従って岩に付着していても生活ができるのです。 真珠養殖の作業工程にはこういう貝の性質も十分知っているが故の智恵が沢山盛り込まれています。例えば、ネットに貝を入れて吊るす場合、ひとつのポケットに必ず2個の貝を入れています。2個の貝は足糸という分泌物を出して互いに貝殻同士で付着しています。これは何かに付着していないとストレスを起こす貝のための予防策です。