うろこ

第88回

30年以上も前のことですが、私にとって忘れられない出来事がありました。真珠を選別していた時のことです。強い日差しの下で、いくつかの真珠の表面に直径1ミリ位の丸いリングが散在しているのです。先輩に聞いてみると“うろこ”とか“すかし”と呼んでいるもので、偶に見られるというのです。これは何なのか、どうして出来るのか、追及は10年近くかかりました。“うろこ”は真珠層で起きる軽微なきずです。真珠の微小な伸び縮みからくる歪(ひず)みが、表層30ミクロン位の結晶層のはがれを引き起こすのです。 “うろこ”のかたちは楕円形で縁(ふち)が黒いのが特徴です。この特徴は真珠の中を透過してくる光がこの縁の所で散乱してしまうため黒く見えるのです。非常におもしろいのは黒蝶真珠にもあることです。この真珠の場合、中を透過する光はありませんから、表面から入った光は縁の所で散乱反射し、白く見えるのです。