「風紋」

第3回

かつて鳥取の砂丘を訪れたことがあります。こ高い頂きに立つと日本海がすぐ真下に見えるのですが、丘のうねりの中に入ってしまうと、砂に閉じ込められた気持ちになります。その種の閉塞感からの救いが風紋です。砂の上の微細な模様が、風向きで刻々と変化していくからです。 真珠の表面を顕微鏡で100倍位に拡大しますと、この風紋に似た模様が現れます。正確には結晶成長模様と言いますが、模造真珠を除けばすべての真珠に見られる普遍的な模様です。逆に言いますと今の科学技術では人間が決して作れない模様です。 真珠層を構成している微細なカルシウムの結晶の集合状態がこのように見えるのです。 風紋が風向きで刻々と変化するように、真珠のこの模様も、海と貝の様々な条件でいろいろに変化します。厳密に見ればひとつとして同じ模様はありません。それ故、私たちは、これを指紋にも例える場合があります。