第33回
真珠の研究にとって欠かせない機材のひとつに走査電子顕微鏡があります。略称SEM(セム、Scanning Electron Microscope)は、象牙の塔から広く一般大衆に普及しえた画期的電子顕微鏡と言われています。操作も簡単で、価格も比較的手頃だからです。
思えば今から20年も前でした。研究室勤務の私は、念願のSEMを入手し、その拡大画像に感動したものでした。
真珠層を構成するカルシウムの結晶が本当にれんが塀のように積み重なっているのです。御木本幸吉翁も見たことがない真珠の本質的姿が見られることに、この時代に生きていてよかったなどと思ったりもしました。
ミクロの世界を見ることの感動から始まったSEMとのつきあいも、現時点ではより重要性を帯びてきました。
真珠のテリの光学的解明、さらに海の中で、貝の中で、テリがどのように作られていくのかという生物的解明にも、電子顕微鏡による画像解析が必須となってきました。