「蘇生」

第10回

最近聞いた話を一題。 M社のジュエリー製作部門は日本で最も古い伝統を持っています。 明治の初めに、飾り職人をヨーロッパに派遣してその技術を習得させたところから出発しているのです。 そんなわけから沢山の方が見学を希望してくるのだそうですが、 先日も駐日フランス外交官の奥様たち一行が参観し、 すばらしいジュエリー製品が出来上がっていく工程に目を輝かしたのだそうです。 懇談の席上、一人の婦人がこんなことを言ったそうです。 「わたしは真珠が大好きなのですが、真珠って2、3年で死んでしまうんですよね。何か生き返る方法がありますか」 養殖真珠のオリジネーターを自負するこの会社の幹部は、 聞き捨てならない言葉に驚いて、いろいろ尋ねてみたそうです。 真珠の手入れという考え方が全く知られていなかった、これが真相です。 「着用後は拭く」、真珠を<殺さないため>の鉄則です。