「薄まき」

第12回

私の研究所では真珠のグレーディングとしてマークというのを発行しております。 てりが優れていることのギャランティー化です。 この検査では、他の品質要素は一切見ません。かたちや色、きず等のあれこれも問いません。 ただてりのみを見るのです。 唯ひとつ、例外は薄まきです。これは品質以前の問題、真珠としての存在を問う問題だからです。 核固有の縞模様が透けて見える。 はけでサッと塗ったように申し訳程度に真珠層がくっついているものを真珠と言えるでしょうか。 「夏までは順調に巻いていたのに10月に悪い潮が入ったため浜揚げは惨憺たるものでした」、 先日、熊本の生産者Aさんが山のような薄まき珠を持ってやってきました。 その言葉にひっかかりを感じた私は、その薄まき珠を分析してみました。 結果は驚きです。貝が真珠を食べてしまったのです。緊急避難で真珠からカルシウムを摂ったのです。