「火炎地獄」

第19回

Flame:①炎、火災、燃えるような色彩(光輝)|②激情、熱情|③[戯]恋人、情人(コンサイス英和辞典より)

コンクパールの存在とその希少性を世に知らしめたのは銀座のM真珠店でした。 アコヤ、黒蝶、白蝶、淡水とさまざまな養殖真珠が百花繚乱と咲き誇っているこの時代の中で、天然真珠というひとつの席をコンクパールが切り開いたのです。 以来、ホースコンク、メロメロパール、あるいはアメリカ淡水のフェザー、ドッグティースなどなど席が温まる暇のないほどの天然真珠ラッシュが続いています。 しかし、私にとっていまだに忘れられない、強烈な印象を与えてくれたのはコンクパールのフレームでした。 顕微鏡下に見たその世界は燃え盛る炎の群れでした。この世のさまざまな悪鬼を焼きつくす火炎地獄がこの小さな真珠の中に凝縮していたのです。