「濁り珠」

第42回

真珠業界で40年近く過ごしている長老のK氏が言う。「最近の珠を見ていると、昔の薄まきが懐かしいですよ。薄くても調色(※)でそれなりに様になりましたからね。それにしてもこの濁りの珠は色は乗らないし、磨いてもテリは出ないし、まったく加工でもお手上げですよ」 通称「濁り珠」。白く、全体にぼうーと濁っていて、透明感のまったくない珠です。ここ数年日本のアコヤ真珠の一部に現れている真珠です。 この「全体にぼうーと濁っていて」をもう少し具体的に言いますと次のようになります。 「真珠頭頂部に映る窓や蛍光灯などの光源の像が、不鮮明で幾層にもにじんでいる」ということです。 これをさらに科学的に言うと、「真珠内部に入射した光が、表層部で大量に散乱し、それが反射光として出てくる」ということになります。 なぜ「表層部で大量に散乱するか」、海か貝か、原因を追究しているところです。 ※浜揚げされたアコヤ真珠は、一般に漂白、軽微な着色などの加工が施される。 この「軽微な着色」のことを調色(ちょうしょく)という場合があります。