「かたち」

第6回

丸い核を入れるのだから丸い真珠が出来るのは当然という見解があります。ではサイコロ状の核を入れれば、そういう真珠が出来るかと言いますと、出来るのです。そもそも核という表現がおかしいのであって、正確に言えば、真珠のかたちを規制する一種の鋳型が“核”なのです。では真珠を作るのは誰かというと、「真珠袋」という一種の臓器がそれにあたります。臓器ですから、貝本体の調子、健康状態や生理状態でさまざまな影響を受けます。それはかたちに対しても反映され、ゆがみやひずみとなって現われます。問題は鋳型のかたちに目を奪われるのではなく、生命体が生み出すゆがみやひずみ、生命の履歴のおもしろさにあります。そしてさらにおもしろいのは、私たち人間という生命体がそのかたちに個性を感じることにあります。真珠は一個として同じかたちはありません。