サイクル珠

第73回

何本もの溝が真珠を取り巻いている珠のことを「サークル珠」と呼んでいます。 この溝(サークル)の成因について、私たちの得意な構造的アプローチを試みたことがあります。真珠を切断し、内部構造を電子顕微鏡で観察していく手法です。非常に興味のあることはこの溝が真珠の中心軸に対して左右対称の関係にあることです。その対称性はコンマ数ミクロンの結晶レベルに及んでいるのです。ここから私たちは真珠袋の中で真珠が回転するという仮説を提起しました。そしてロクロを回転させながら壺を作るように、何かの突起が真珠袋に出来て回転しながら溝が掘られるというふうに考えました。 この真珠袋の突起という仮説で重要なことは、同時に普通の真珠袋の挙動も観察したことです。おはじきのような扁平な真珠や、ひょうたんのような形の真珠も、時間の経過の中でやがては球形にしていくのです。一種の「反証主義(※)」を採用したのです。 ※養老孟司「バカの壁」参照