「花珠」

第35回

“花珠”、きれいなイメージを誘う言葉です。養殖真珠発祥の頃から語り継がれている言葉ですが、誰が唱え、どのような真珠を指したのかははっきりしていません。 海から揚がった真珠の内、ずば抜けて高品質のものといった漠然としたものです。例えて言えば真円で無キズ、ピンクの光彩色を伴ったテリの極めて強い、出現率5%未満の真珠と言ったところでしょうか。 ところでこの珠に冠した「花」という美称ですが、「社交界の花」とか「都の花」というように古くからよく使われています。 筆者の場合は、“花珠”を頂点に“胴珠”“裾珠(すそだま)”という、しばしば使われる出現率の三角図形を、袴姿の美人に例え、顔の部分を「花」にイメージ化したものです。 最近、ミキモト真珠博物館の館長であるM氏が興味ある話をしてくれました。 三重県の漁民の間で使う、「漁のハナ」、即ち漁の一番乗りでは「端」の字を使い、それが語源ではないかというのです。「花」か「端」か、いずれにしてもトップの意味です。