「直入」

第28回

タヒチの首都パペーテ空港に降りたのは6年ぶりです。海も空も街の雑踏も少しも変わっていませんでした。 大きく変わったことがひとつあります。養殖現場での挿核技術者が日本人から中国人に変わったことです。 原因は人件費の違いです。徹底したコスト削減が行われているのです。わずかに残る日本人は、その「直入」技術を買われているのです。 「白蝶貝の浜揚げは、アコヤ貝の真珠の採取と全く異なり、貝を屠殺して真珠を取り出したりはしない。メスを使って収足筋や腸管などを傷つけないように注意しながら軟体部を切り、生殖腺にある真珠袋をできるだけ破損しないように切り開いて、真珠を取り出すのである。」(日本真珠振興会刊『真珠の養殖』より引用) 「真珠を貝の体内から取り出したなら、直ちに新しい核を、今取り出したところの真珠袋に接着するように挿入する。この挿核手術を直入手術作業という。」(上述書より引用)