「すべて表面」

第43回

真珠はすべて表面から出来ています。これは真珠のどこの箇所でもよいですから、顕微鏡で覗いてみると、表面特有の模様、指紋のような模様が見えることからも立証されます。 貝殻を削って球体にしたものには、必ず表面と断面がありますから、これが真珠との決定的違いということになります。しかし全面が表面構造から出来ているというのは、考えてみれば不思議なことです。 生物が作るこの「メービウスの帯」(※)的性質はどうして出来るのでしょうか。 貝殻には外側と内側があります。外側はアコヤ貝の場合、ギザギザで岩のような外観です。一方、内側は滑らかで真珠光沢を放っています。この貝殻は、アコヤ貝は外套膜という臓器で作ります。もう少し厳密に言いますと、この臓器の表面を覆っている細胞が作っています。またこれら細胞には、外側、内側それぞれの役割分担が決まっています。 養殖真珠というのは、この内側だけを作る細胞を体内に移植するわけですから、核のまわりには貝殻内面=表面が出来るわけです。 ※メービウスの帯 長方形の一辺を180度ねじり、相対する辺を貼り合せてできる曲面。境界はあるが表裏がない。位幾何学の対象となる空間図形。 (講談社「日本語大辞典」より)