第174回
大学の同窓会誌ですばらしい体験記にめぐり会いました。「海・貝・人と共に生きる―虹色に輝く金色の南洋珠つくり―」です。著者は1990年代後半、ミャンマーに出向き、孤軍奮闘、辛苦を重ね、遂に、究極の南洋真珠“ミャンマーレインボーゴールドパール”の生産に到達したのです。これまでの私の諸経験からも、実に“よく分かる”感動話です。
1990年代後半、私は構造養殖学試論という新しい切り口で真珠養殖をすべきであるという提案をしました。簡単に言うと海・貝・人が揃うと良い珠ができるという考え方から脱却すべきだという主張です。真珠の品質を各要素に分解し、それを構造的に分析、それらが真珠袋の形成や挙動のリズムと、更には海況、生理、人の諸作業との関連にどう繋がるのかという、言うなれば、珠から海、貝、人を見るという考え方です。あれから20年余、諸実験を試み続けているのですが、糸口は未だ出てきません。真珠生成の深淵さよ、です。