アコヤ真珠が生き残るために<その4>すべての面が表面から出来ている

第154回

数ある宝石の中で、真珠は、生き物の生命活動の最中(さなか)で作られる唯一の宝石です。そのひとつの証しが「真珠はすべての面が表面から出来ている」ことにあります。

若干の例外を別にして、ほとんどの真珠は顕微鏡でどこを観察しても表面特有の模様が見えます。これは貝体内の真珠袋で真珠が形成される時、袋を構成する細胞約2000万個がひとつひとつのカルシウム結晶作製に参画していることに起因します。さらに凄いことは、まき厚0.4ミリ、直径7ミリのアコヤ真珠を例にとると、その真珠層はこのカルシウムが2200億個詰まっています。そしてすべての結晶がc軸を垂直に向けているのです。<その2>で述べました上下半球に補色関係の光彩(干渉色)が出るのは、このc軸が鍵を握っているのです。それにしても「すべての面が表面から出来ている」ということは大変なことです。私たちの身の回りで、これに該当するのは生き物だけです。生き物の「真珠」の所以です。