真珠保存修復学

第103回

私たちが発行している月刊誌『マルガリータ』の新年号で、私は「真珠保存修復学」の確立を提唱しました。これは長い間真珠が(100年前までは天然、それ以降は養殖真珠)代表的宝石として扱われてきたため、換言すれば宝石というひとつの括りの中で見られてきたため、圧倒的多数を占める他の鉱物起因の宝石との際立った物性の違いが軽視されてきたことへの反省から案出されました。 顧客の立場からの視点では、購入された真珠は例え物性的弱さを内在していたとしても、極めて価値ある大切なものであり、子供や孫へと残さねばならないものの筈です。人類という視点ですが、文化財も一定の物性的弱さを内在し、極めて価値を有し、後世に残さねばならぬものです。そのために生まれたのが文化財保存修復学です。これを模範として、その保存技術や対応策を真珠に応用する、そのための学術的フィールドの提唱なのです。