真珠の中の真珠

第93回

「ローズバッド」という淡水の貝から採れる天然真珠をご存知でしょうか。ローズは薔薇(ばら)、バッドは蕾(つぼみ)の意味です。まるで薔薇のとげのように突起があちこちから突き出ている蕾のような真珠を言います。それぞれの突起が光の干渉を起こし、様々な色合いの光彩を放ち独特の威容を誇っている真珠です。 その真珠の構造を調べるため半分に切断した時のことです。中に入っていて、一緒に切断された小さな真珠の半球がころりと転がり落ちてきたのです。そしておもしろいことにその半球も、それがあった半球の窪みもきらりと輝いています。 真珠の中の真珠は薄いタンパク質の膜で包まれています。ちょうどゆで卵のように、殻に相当する外側の真珠層からすっぽり取れるのです。半球もその窪みも、断面ではなく真珠層の表面ですから、その部分で光は干渉を起こし、きらりと光を放つわけです。