第76回
「…養殖真珠では、次の4工程で真珠が作られる。①二枚貝の貝殻を加工して一定の大きさの真球状に磨いた「核」を作る、②核を「ピース」と呼ばれるアコヤガイの外套膜の切片とともに、アコヤ貝の生殖巣のしかるべきところにピンセットで挿入する、③外套膜の切片は、核に付着した後に、外側の上皮の細胞が分裂して核の表面を覆いつくす、④膜を通して真珠が分泌され、核の周りに真珠層がゆっくり形成される。ここでは①と②は人が行う作業であり、③と④は自然が勝手に行う営みである。養殖真珠は人間と自然の垂直分業による合作ということができる。…」(油井浩「初歩から学ぶ複合材料」工業調査会刊)
プラスチック複合材料の著書からの引用です。ピンセットで挿入など首を傾げるところもありますが垂直分業は見事です。国際的な競争の渦中にある工業分野の専門家たちだけに業種の本質を正確に見抜く「目」を、改めて私たち真珠業界人は学ぶ必要があります。