アワビ

第67回

私たちの食卓に縁がある貝の中で、貝殻に真珠層を持っているものとなると意外に少ないのです。少ないというより、アワビ、サザエの2つぐらいです。アサリ、シジミにカキ、ハマグリさらにはホタテと、すべて真珠層は持っておりません。 先日、ある研究機関から調査依頼がありました。2~3ミリ大の貝殻らしい粉末があるのだが、どういう貝殻か分析して欲しいとのことです。天保9年に作られた地方の旧家の床の間の壁に混ざっていたというのです。 その貝殻粉末は角度を変えるとキラッと光ります。そこで真珠層ではないかと判断しました。では何の貝かですが、解決は電子顕微鏡でした。2ミリの粉末を3千倍に拡大しますと、真珠層を構成するカルシウムの結晶が整然とブロック塀のように積み重なっている様子が写っていました。そうです、このブロック塀がアワビの特徴なのです。