「珠が喰われる」

第22回

「当然のことである」と思われていたことが、何かの機会で、ひっくり返り、そこから新しい視野が広がり始めるということは、人生において時々あることです。 真珠を対象とする専門科学の分野でも、それに似たことが最近ありました。 「天然真珠ができる場所は貝柱と外套膜の中だけである」という某論文中の記述です。 養殖真珠の大半は卵巣の中でできます。というのはそこに核とピースを入れるからです。となると、この養殖の方式は天然とは全く違ったところで作っていることになります。 この視点に立って、最近の真珠作りの諸問題をながめてみると、問題解決の大きな手がかりが得られます。 例えば卵巣が発達するには大量のカルシウムが必要とされます。もしその時期に、卵巣に真珠が入っていれば、卵巣は真珠からカルシウムを摂取します。このことはその真珠は急激に痩せる、まきが薄くなることです。