第27回
先日、著名な宝飾デザイナーT氏と話す機会がありました。その時の氏の言葉「球体というのはそれ自体が完結したかたちであるためデザインの上でそれ以上に広げるのはひじょうに難しいのです」は印象的でした。
真珠が球体であることに慣れ親しんでいる私たちですが、一歩掘り下げてみるとこのことは意味深いものを秘めています。
貝の体の中に丸い核を入れて養殖真珠は出来るのですが、もし三角形の核を入れても、時間がたてばその形は球形に近付いていきます。生体の体内では異物を球形にすることによって違和感を和らげようとする動きがあるのです。
さらに前号でも紹介しましたように、真珠の色や輝きである「テリ」も、上半球に現れるものと、下半球に現れる2種類があります。これもかたちが球であるが故の現象です。
真珠が無限の宇宙のような存在であることは、「形」に着目しても証明しています。